アルコール性ケトアシドーシス

  • アルコール使用障害(Alcohol-Use Disorder:AUD)、アルコール依存症などの患者が過剰なアルコール摂取に伴い、長期的な食事摂取不足によって低栄養状態に陥り、飲酒に伴う嘔吐・下痢、アルコール自体の利尿作用(ADH分泌抑制)などによる脱水状態を背景に、なんらかのストレスが加わって飲酒も出来なくなった状況で発症することが多い
  • アルコール使用者の死亡原因の7%を占めている可能性がある

【症状】

自覚症状) 嘔気(76%)、嘔吐(73%)、びまん性の腹痛(40-75% 腹膜刺激症状や腸蠕動亢進はAKA単独では認められにくい)
バイタルサイン) 頻呼吸(アシドーシスによる)、頻脈、低体温、低血圧
電解質異常)低K血症(最多)、低Mg血症(約20%)、低P血症
 *これらは治療開始して数日後以降に顕在化することが多い

【発症機序】


【診断】

  • 診断基準が存在しない
  • 以下のような様々な所見を総合して診断する

病歴)

アルコール依存症患者が大量飲酒後に消化器症状によって飲酒もできなくなる

検査)

  • アニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシス(尿検査試験紙法では検出できない*)
  • βヒドロキシ酪酸(正常値5.2mmol/L-14.2mmol/L)の上昇が確認されれば確定
  • pHの値に誤魔化されない。pH<7.35となるのは約50%程度、約30%はpH>7.45となる
  • 低血糖(約12%)。高値の場合はDKAも検討する
  • 尿検査では主にアセト酢酸が検出され、βヒドロキシ酪酸は検出しない
血液ガス

【鑑別診断】

  • 急性腸炎、胃腸炎などの消化器疾患や様々な感染症はAKAの原因となったり、合併したりすることが多いので必ず検討する

【治療】

輸液)

  • リンゲル液や生理食塩水投与が推奨される
  • ブドウ糖の投与は重要
  • はじめから電解質低下を想定して以下のような溶液を準備するのもよい
  • 数時間ごとに血糖や電解質をチェックする
  • 半数は12時間以内に改善する
  • ほとんどアシデミアに対して炭酸水素ナトリウム投与を必要としない
  • 治療が終われば、アルコール依存症治療が可能な施設に紹介する

ビタミンB1欠乏
参考文献)
  1. Long B, et al. Alcoholic Ketoacidosis: Etiologies, Evaluation, and Management. J Emerg Med. 2021 Oct 25:S0736-4679(21)00717-4. PMID: 34711442.
  2. 寺井秀樹 他 「アルコール性ケトアシドーシスを合併した2型糖尿病の 1 例」糖尿病 49(5):343~348, 2006
  3. 横山 雅子 他「救急患者におけるアルコール性ケトアシドーシスとアルコール性ケトーシスの検討」日救急医会誌 2002; 13: 711-7