COPD急性増悪

COPD急性増悪

    ・COPD急性増悪は患者の呼吸機能とQOLを悪化させ、生命予後にも著しく悪影響を及ぼす。したがって、これを可及的初期に診断して適切な治療を行うことが、中等症以上のCOPD患者の治療において非常に重要
    ・主たる原因は、ウイルス感染、細菌感染、大気汚染物質への暴露である。ウイルス感染は40〜60%を閉めるという推計がある。一方、30%程度は原因不明である
    ・急性増悪で入院した患者の死亡率は6〜11%に及ぶ。さらに高CO2血症を伴う場合には、入院中死亡率は20%を越え、気管内挿管を受けた場合には30%に達するという報告もある(*2)
    ・常に急性増悪について患者指導を行い、患者が自分でアセスメントして対応できるように指導しておく必要がある
    ・前向きRCTにて高用量フルチカゾン(500μg/日)吸入にて、急性増悪の頻度が減少、臨床症状の増悪も軽減できたことが示されている(*3)
    診断)

    ・息切れの増悪、喀痰量の増加と膿性化、発熱などにより臨床的に診断する
    ・最も重要なことは、急性増悪した患者に対応することは当然として、ふだんから患者に対して急性増悪について指導を行い、内服・受診など腎族に対応できるようにしておくことである。得に呼吸機能予備能の乏しい中等症以上の患者では、わずかな遅れが重大な結果を招く可能性があることを念頭に置くべきである
    治療)

    ① 酸素投与 慢性呼吸不全の患者においては酸素飽和度88〜92%を目標とする。必ず血液ガスで高CO2血症を評価し、炭酸ガスナルコーシスの発症を予防〜早期発見するようにつとめる
    通常の酸素投与では不十分な場合にはNPPVを導入する

    ② 薬物療法 短時間作用型β刺激剤(SABA) サルブタモール(ベネトリン、サルタノール) 2.5mg(ネブライザー) 2〜4puff(100μg/puff 吸入器)
    抗コリン薬 イプラトロピウム(アトロベント) 2〜4吸入 q4〜6
      ・SABAと同時に開始するのが望ましい
    ステロイド 軽症の増悪以外では即座に開始すべき
      ・内服)PSL30〜60mg PO など(原則は1mg/kg) 静注)ソル・メドロール 40〜120mg+生食20ml ゆっくり静注
      ・中等症以外の場合は、可及的早期にステロイド投与を開始したほうが経過がよいので、コンプライアンスを考慮した上で、あらかじめステロイドを処方しておく場合もある。
       その場合は、内服を開始するようであれば、できるだけ早期に受診するよう指導
    抗菌薬 痰の膿性化があれば推奨される
       軽症(外来治療) ABPC(サワシリン) 1500mg 3x DOXY(ビブラマイシン)100mg 2x など
       中等症以上(入院) CTRX(セフトリアキソン)2g q24 ABPC/SBT(ユナシン)1.5〜3.0g q6
         ・βラクタム剤アレルギーの場合 LVFX(レボフロキサシン)500mg q24

    参考文献)
    1. 鈴木直仁、大田健:「慢性閉塞性肺疾患(COPD):診断と治療の進歩 Ⅰ.病院と病態 3.急性増悪」日本内科学会雑誌 第97薪 第6号 2008
    2. Groenewegen KH, et al : Mortality and mortality-related factors after hospitalization for acute exacerbation of COPD. Chest 124 : 459―467, 2003.
    3. Burge PS, et al : Randomised, double blind, placebo con- trolled study of fluticasone propionate in patients with moderate to severe chronic obstructive pulmonary dis- ease : the ISOLDE trial. BMJ 320 : 1297―1303, 2000.