アレルギー性気管支肺真菌症

【概念・定義】

  • 気道内に腐生・発芽したアスペルギルス菌糸の菌体成分あるいは分泌物質に対してI型・III型アレルギー反応が惹起され発症するアレルギー性気道疾患
  • 病態としては
    1. アスペルギルス属真菌の下気道内への定着
    2. Ⅰ型・Ⅲ型アレルギー反応
    3. 気管支内での好酸球性粘液栓の形成。内部には真菌菌糸と多数の崩壊好酸球が認められ、極めて粘稠でニカワ様あるいはピーナッツバター状と言われる。速やかに除去されないと不可逆的な中枢性気管支拡張症を来す
  • 真菌感染症と異なって真菌は組織浸潤せずに、気管支内粘液栓に限局している
  • 原則として成人喘息患者あるいは嚢胞性線維症患者にみられる。本邦では嚢胞性線維症は稀である
  • 本邦では50歳以降の発症が2/3を占め、発症年齢中央値は57歳
  • 本邦での喘息患者におけるABPM有病率は2.1%と推定されており、ほぼ海外と同様

【症状】

  • 基礎疾患である喘息の発症からABPMの発症までには数年〜数十年のタイムラグがある
  • 咳嗽、喀痰、重篤な喘息症状
  • 放置すれば肺の線維化、呼吸不全に至る難治性アレルギー性疾患

【検査所見】

(血液生化学検査)

  • 末梢血好酸球増多
  • 高IgE血症

(画像診断)

  • 移動性の浸潤影
  • 中枢性気管支拡張
  • 気管支内粘液栓(高吸収粘液栓)

【診断】


【治療】

  • 副腎皮質ステロイドあるいは抗真菌薬の全身投与
  • 原則はステロイドであり、糖尿病、緑膿菌や非結核性抗酸菌による下気道感染などがある場合には抗真菌剤を用いる

ステロイド)

  • プレドニゾロン0.5mg/kg/日で1〜2週間投与したのち漸減し3〜5ヶ月で中止する
  • 治療開始後6週間時点での総合改善率は88%。治療1年以内の再燃率は50%
  • 治療2年時点では15%は経口ステロイド依存となる

抗真菌薬)

  • 単独投与で経口ステロイドと有効性には差が無い
  • 治療開始後6週間時点での総合改善率は88%。治療1年以内の再燃率は12%
  • 副作用は経口ステロイドより有為に低い
  • 半年以上の長期投与では耐性誘導が問題になるため避けるべき

抗IgE抗体オマリズマブ)

  • 重症例で併用する
  • 症状、呼吸機能の改善、ステロイド薬減量効果がある
参考文献)
  1. 浅野浩一郎「アレルギー性気管支肺アスペルギルス症」日内会誌 111:2102~2106,2022
  2. アレルギー性気管支肺真菌症研究班.アレルギー性気管支肺真菌症の診療の手引き.医学書院,2019, 57―61.
  3. 浅野浩一郎「アレルギー性気管支肺真菌症の診療の手引き」アレルギー 69(3) 164―168 2020