- 突発性の強い腰背部痛で体動で増悪しない場合にはじめに疑うべき疾患のひとつ
- 肋骨脊柱角(CVA)叩打痛がみられることが多い
- 年間発症率134人/10万人(2015年)
- 日本人が一生のうちに尿路結石にかかる割合は男性が11人に1人、女性が26人に1人
- カルシウムをはじめとした種々の尿中成分を背景として、尿pHや結石形成の阻止因子・促進因子が複合的に作用して結石が形成される突発性の強い腰背部痛で体動で増悪しない場合にはじめに疑うべき疾患のひとつ
疾患
尿管結石
【症状】
- 典型的には疼痛(腎疝痛)と血尿である
- 尿管結石のうち9-33%で尿潜血が陰性
- 痛みは患側の腰背部を中心に時に下腹部から外陰部へ放散
- 下部尿管結石ではときに膀胱刺激症状
【診断】
- まず、はじめに超音波検査を行うよう推奨されている
-
超音波検査で所見が得られなければ腹部単純CTが望ましい
腹部単純CT 感度:94〜100% 特異度:92〜100%
KUB 感度44〜77%,特異度80〜87%
静脈性尿路造影 感度:51〜66% 特異度:92〜100%
腹部エコー 感度78% 特異度31%
【治療】
(疼痛管理)
- 疼痛管理においてはNSAIDSが第1選択。第二選択はオピオイド
- ブスコパンは補助薬剤と認識すべき
- 芍薬甘草湯は即効性がある
(結石に対する治療)
- 自然は遺跡率は結石の径<5mmで68%、5〜10mmで47%
- 径10mm以下のものでも1ヶ月以上排斥されない場合は積極的な結石除去を考慮すべき
- 径10mm以下の結石では、α1遮断薬、あるいはカルシウム拮抗薬によって自然は遺跡率が増加する
(再発予防)
- 水分は、1日尿量>2000mlとなるように摂取するよう指導する
- 高プリン体食品の過剰摂取を控える
- 食塩の過剰摂取はカルシウム結石の危険因子になりうる
- サイアザイドは尿中カルシウム排泄量を減少させるので、カルシウム結石の再発予防に有効である
- クエン酸摂取はカルシウム結石の再発予防に有効
- 尿酸生成抑制薬はカルシウム結石の再発予防に有効
- 食物繊維の摂取は推奨されない
- カルシウム結石の再発予防には、一定量のカルシウム摂取が勧められ、制限は推奨されない
【積極的結石除去の治療法選択】
(結石の大きさ)
(結石の部位)
選択される治療法
ESWL:体外衝撃波結石破砕術(extracorporeal shock wave lithotripsy)
TUL:経尿道的尿路結石破砕術(trans- urethrallithotripsy:TUL)で硬性内視鏡(rigid)を用いるもの
PNL:経皮的結石破砕術 (percutaneous nephro-uretero lithotripsy
f-TUL:経尿道的尿路結石除去術で軟性内視鏡(flexible)を用いるもの
- 参考文献)
- 宮澤克人、鈴木孝治「尿路結石症診療ガイドライン2013」日内会誌 106:994~999,2017
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/minds/acute-abdomen/acute-abdomen-front-matter.pdf#view=FitV- 井川掌「上部尿路結石(腎結石,尿管結石)[私の治療]」日本医事新報 Webコンテンツ 2020-03-10登録