急速進行性糸球体腎炎
【定義・疫学】
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急性あるいは潜在性に発症する肉眼 的血尿,蛋白尿,貧血,急速に進行する腎不全 症候群(WHO)
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「腎炎を示す尿所見を伴い数週から数カ月の経過で急速に腎不全が進行する症候群」(進行性腎障害調査研究班と日本腎臓学会)
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一次性と二次性に区分される(下表参照)
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RPGNを呈する最も頻度の高い腎病理組織学的診断は壊死性半月体形成性糸球体腎炎
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日本透析医学会の調査によると我が国の新規透析導入患者のうち、RPGNは全体の1.2~1.3%を占め、2018年は1.5%
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2009年以降の症例では6ヶ月、24ヶ月生命予後は、それぞれ90.6%、86.0%
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主な死因は感染症で50%を超える
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前駆症状は非特異的で、上気道炎などの感冒様症状や感染症様の全身倦怠感や微熱、食欲不振など。体重減少の頻度も高い
【診断】
RPGNの疑い)以下の1)〜3)を認める場合「急速進行性糸球体腎炎の疑い」と診断する
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尿所見異常(主として血尿や蛋白尿,円柱尿)を認める
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eGFR<60ml/分/1.73m2
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CRP高値や赤沈促進
ただし、画像検査が可能な場合は、腎皮質の萎縮がないことを確認する 急性感染症の合併、慢性腎炎に伴う緩徐な腎機能障害が疑われる場合には、1〜2週間以内に血清クレアチニンを再検し、eGFRを再計算する
RPGNの確定診断)
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数週から数カ月の経過で急速に腎不全が進行する(病歴の聴取、過去の検診、その他の腎機能データを確認する)
` 3カ月以内に30%以上のeGFRの低下を目安とする
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血尿(多くは顕微鏡的血尿、稀に肉眼的血尿)、蛋白尿、円柱尿などの腎炎性尿所見を認める
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腎生検で壊死性半月体形成性糸球体腎炎を認める
上記の1)と2)を認める場合には「RPGN」と確定診断する。可能な限り腎生検を実施し3)を確認することが望ましい
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ただし,過去の検査歴等がない場合や来院時無尿状態で尿所見が得られない場合は、腎臓超音波検査、CT等により両側 腎臓の高度な萎縮がみられないことを確認し慢性腎不全との鑑別を行う
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脱水の把握・補液による是正に努め高度脱水による腎前性急性腎不全を除外する。また、腎臓超音波検査、CT等で尿路閉塞による腎後性急性腎不全を除外する
【病形と原疾患の評価】
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60~70%がANCA関連血管炎関連、5%程度が抗GBM病。その他、非ANCA関連の全身性血管炎、ループス腎炎半月体形成を伴う糸球体腎炎、感染関連、薬剤性など
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抗GBM病では抗GBM抗体が検出されず、臨床経過が非典型的な症例もみられる
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非ANCA関連の全身性血管炎はIgA血管炎、クリオグロブリン血症性腎炎、リウマチ性血管炎、悪性腫瘍、その他の壊死性血管炎等
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感染関連とは溶連菌感染後、感染性心内膜炎・シャント腎炎等の感染関連糸球体腎炎、肝炎ウイルスなど
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ANCA 関連血管炎などでは白血球増多は必発で、特に好中球増多を示し、リンパ球はむしろ低下する。さらに血小板増多もしばしば認められる
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SLEでは急性期に白血球(リンパ球)と血小板減少が認められることが診断基準にもなっており、ANCA関連血管炎との鑑別点となる
【治療】
ANCA関連RPGN)
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治療ガイドラインがある
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臨床的重症度、年齢、透析導入などを考慮して治療方針を決める
ステロイド ステロイドパルス療法で開始し、内服に切りかえる(0.6〜0.8mg/kg/日)
免疫抑制療法 リツキマシブ、サイクロフォスファマイドで導入
血漿交換 重度の腎障害例で推奨されている治療ガイドラインがある
抗GBM型RPGN)
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原則連日または隔日で抗体が消失するまで継続する
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サイクロフォスファマイドやリツキマシブが用いられる場合もある
それ以外のRPGN)
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膠原病関連や感染症では原疾患の治療に準じる ・免疫抑制療法、血漿交感、免疫グロブリン等が用いられる場合もある
【FeNaの計算】
FeNa(%)
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参考文献)
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金子修三、山縣邦弘「我が国の急速進行性糸球体腎炎の診療における現況と将来の展望」日内会誌 109:886~895,2020
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土井研人「急性腎障害の診断と治療」日内会誌 110:905~911,2021
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成田一衛監修 難治性腎障害に関する調査研究班「エビデンスに基づく急速進行性糸球体腎炎RPGN診療ガイドライン2020」
https://jsn.or.jp/academicinfo/report/evidence_RPGN_guideline2020.pdf