糸球体腎炎

糸球体腎炎

  • 2017年の透析導入患者の原疾患の内訳は慢性糸球体腎炎が16.3%を占め、42.5%の糖尿病性腎症に続いて第2位
  • 本邦では検診システムがあるため、比較的早期の段階に診断がされやすい
  • 高齢者の腎炎やネフローゼ症候群が多い

【糸球体の構造】

  • 糸球体は基底膜によるendocapillary(管内)とexracapillary(管外)に区分される
  • 管内は解剖学的にも、機能的にも閉鎖空間である
  • メサンギウム細胞は、①細胞収縮・弛緩による糸球体内血行動態調節、②糸球体構造の維持、③サイトカイン、炎症性因子、血管茶道性物質の産出、④異物の除去、などの機能をもつ
  • 糸球体上皮細胞(ポドサイト)は糸球体基底膜を外側から覆い、突起が多数ある外観からタコ足細胞とも呼ばれる。糸球体濾過障壁のもっとも重要な構成要素とされている

【分類】

  • 糸球体のみに病変が限局する場合を一次性(原発性)、全身性疾患に随伴して糸球体病変が生じるものを二次性と分類する
    1. 病理学的分類
    2. 糸球体障害の機序による分類
  • 「AKI診療ガイドライン2016」ではAKIに対する早期の血液浄化療法開始が予後を改善するエビデンスは乏しく、臨床症状や病態を広く考慮して開始時期を決定すべきと推奨している

【診断】

(1日尿タンパク排泄量)

  • 病的なタンパク尿の検出には本来は1日蓄尿によるタンパク定量が必要
  • 試験紙法は随時尿の評価なので、濃縮尿の場合は高度に、希釈尿の場合には軽度の結果になる
  • 尿細管障害の蛋白尿はみられるが、通常1~2g/日まで。それ以上の蛋白尿をみた場合は糸球体の障害を考える
  • そこで、随時尿で尿タンパクを評価する場合は、尿タンパククレアチニン比を用いて、1日尿タンパク排泄量を推定する
    • 尿タンパククレアチニン補正: 尿タンパク(mg/dl)/尿中クレアチニン濃度(mg/dl)
    • 0.2g/日以下: 正常
    • 0.3〜0.5g/日: 1ヶ月後に再検し、持続していれば1〜2年以内に腎専門医紹介
    • >0.5g/日以上: 数ヶ月以内に腎専門医に紹介
    • >3.5g/日以上: ネフローゼ症候群の可能性が高く、ただちに腎専門医に紹介

    尿タンパククレアチニン補正
参考文献)
  1. 丸山彰一 他「糸球体腎炎・ネフローゼ症候群の診断と治療の進歩」日内会誌 109:877~880,2020 
  2. 小松康宏「腎臓病診療に自信がつく本」カイ書林 2010
  3. 姚建 他「糸球体メサンギウム細胞の細胞特性」日腎会誌 2008;5(0 5):554-560.
  4. 淺沼克彦 他「腎糸球体上皮細胞の細胞特性I」日腎会誌 2008;5(0 5):532-539
  5. 髙岸勝繁 他「ホスピタリストのための内科診療フローチャート第2版」シーニュ 2019