ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群

  • 3.5g/日以上の蛋白尿の持続と血清アルブミン値3.0g/dl以下の低アルブミン血症により診断
  • 発病率は3/10万人年
  • 原発性ネフローゼ症候群が約6割、続発性ネフローゼ症候群が約4割を占める
  • 原発性ネフローゼ症候群では、膜性腎症が約3割で最多、次には微小変化群で1割くらい
  • 続発性ネフローゼ症候群では糖尿病性腎症やアミロイドーシスによるものが多いが、若年ではループス腎炎が1割程度ある

【診断】

  • 低アルブミン血症に伴う浮腫、胸水、腹水
  • 有効循環血流量低下に伴う腎障害
  • 血液凝固異常に伴う血栓形成
  • 脂質異常症
  • 易感染性

【検査】

【診断】

  • 総コレステロールは53%で300mg/dL以上、24%で300mg/dL以上となるが診断の必須項目ではない
  • 高齢者のネフローゼ症候群患者における腎生検に関するエビデンスはなく、その適応については腎臓専門医、専門医療機関へコンサルテーションするよう提案する(*5)

随時尿を用いた1日尿タンパク量推定

【治療】

対症療法)

  1. 全例でACE阻害薬、あるいはARBを可能なら使用量上限まで投与。効果不十分であればアルドステロン拮抗薬を使用
    • 高血圧がなくても使用。下記のように収縮期血圧<110mmHgとならないように調節
  2. 利尿薬 フロセミド40〜80mg/回 1日2〜3回 作用時間が短いので1日2〜3回投与とし、投与間隔は6時間以上とする
  3. 高血圧 目標は、収縮期血圧110〜125mmHg。110未満となると腎機能増悪リスクとなる
  4. 抗凝固療法
    • 深部静脈血栓症、肺血栓塞栓症、腎静脈血栓症が多い
    • 膜性腎症、Alb<2g/dL、尿タンパク量>10g/24h、循環血流量低下、臥床がちなどがあれば高リスク
  5. アルブミン
    • 高度浮腫、胸水のときの例外的処置
    • 適応は
      1. 循環血流量低下によるショック
      2. 大量の胸水、腹水貯留による呼吸不全
      3. 高度の陰嚢水腫、下肢の浮腫で、歩行・移動が困難
      4. 大量腹水を伴う腹膜炎
      5. 高度浮腫による皮膚断裂
    • 症状のない低アルブミン血症には適応がないばかりか、長期的には腎障害の原因ともなりえる

    0.5〜1.0g/kgのアルブミン製剤を60分以上かけて関与に投与し、その後にフロセミド(成人で20〜80mg)を投与する。最低6〜8時間は感覚をあける

特異的療法)

原発性ネフローゼ症候群 病型に応じてステロイド、免疫抑制剤などを使用原発性ネフローゼ症候群 病型に応じてステロイド、免疫抑制剤などを使用

  • 膜性腎症ではステロイドや免疫抑制剤の治療効果を示すエビデンスがない

続発性ネフローゼ症候群 原疾患の治療

参考文献)
  1. 丸山 彰一 他「ネフローゼ症候群の診断と治療」日本内科学会雑誌 110巻 9号 1972-1980,2021 
  2. 小松康宏「腎臓病診療に自信がつく本」カイ書林 2010
  3. 髙岸勝繁 他「ホスピタリストのための内科診療フローチャート第2版」シーニュ 2019
  4. 成田一衛 監修「エビデンスに基づくネフローゼ症候群診療ガイドライン2020」東京医学社
  5. 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2020」東京医学社