疾患
血液ガス(従来から酸塩基平衡異常のある場合)
血液ガス(過去の数値との比較)
【STEP1 酸塩基平衡の評価】
(酸素化の状態)
- ・パルスオキシメーターによる飽和度は末梢循環不全などにより、実際の動脈血酸素分圧と解離することがあるので注意
- ◎ 静脈血液ガスではpHは動脈よりおよそ0.033低く、HCO3ーは1mEq/Lほど高い。乳酸は0.18〜1.06mmol/Lほど高くなるがわずかである。PaO2とPaCO2はバラツキが大きく参考にならない
(過去のデータ)
(現在のデータ)
・一般的な正常値はpH(7.35〜7.45)、PaCO2(35〜45mmHg)、HCO3-(22〜26mEq)であるが、明確に区分するため上記の値を用いる
・乳酸値の単位mg/dLからの換算は0.111をかける(上限値18mg/dL≒1.998≒2.0mmol/L)
(アルブミン補正)
- ・アルブミンは陰イオンであるため、低アルブミンのある場合には補正を行う
・アルブミンの正常値としては4g/dLを用いている
判断
・アシデミア、アルカレミアは血液のpH異常そのものを示す用語
・アシドーシス、アルカローシスは血液pH異常ではなく、pHを上下させる生理的機序を示す用語
・乳酸アシドーシスが軽度であっても、局所臓器虚血が疑われる場合は重症を示唆する
・ショックは乳酸アシドーシスの主要な原因であり、中でも敗血症が多い
・カフェインの大量内服でも乳酸値は上昇する
・乳酸値が正常範囲内でアニオンギャップが低下するアシドーシスは尿毒症性を鑑別診断にいれる
【STEP2 代償状態の評価】
・急性あるいは慢性のなんらかの一時的な原因によって酸塩基平衡が崩れた場合には、必ず平衡を保つ方向に呼吸性あるいは代謝性の代償メカニズムが働く
・それが、以下に示す予測値と一致すれば上記の診断で十分であるが、大きく解離した場合には、それ以外の酸塩基平衡の異常が隠されていると考えられる
アニオンギャップ(mEq/L:正常値 12±2 mEq/l)
- 血ガス結果から算出したアニオンギャップは信頼性に乏しいので血液生化学検査の結果が出るまでは断定せずに保留しておく ・アニオンギャップは乳酸値上昇に関して感度、特異度ともさほど高くないのであまりこだわらない
・詳細は以下を参照
【STEP2 呼吸状態の評価】
P/F比
・酸素化の指標 400以上で正常、200未満で重度呼吸不全
・上記の酸素化常態をチェックしなかった場合は室内空気として算出
呼吸の状態
【STEP3 呼吸代償の評価】
CO2実測値と予測値の差
呼吸性代償の状態
- ・pCO2予測値はJavaheriの式(PaCO2=0.7×HCO3-+20)を用いている。これより大きければ呼吸性アシドーシスがあると判断する
・この差が5未満なら軽症、5以上で10未満なら中等症、10以上なら重症と判断する
・中等度では呼吸補助療法を検討、高度では実施する
代償の時間的経過
-
・呼吸性代償は生理的に極めて短時間に行われる
・腎性代償は尿中HCO3-の排泄と再吸収で行われ、プラトーに達するまでは数日〜1週間はかかる
・腎性代償は過剰に為される場合がある。詳しくは下のリンクを参照
【STEP4 呼吸性および腎性代償の検証】
-
・各病態においてpH、PCO2、HCO3-と予測値のズレを検証する
・pH予測値はバラツキが大きいので参考程度とする
・一次的に生じたと思われる変化がどんな酸塩基平衡の変化なのかを推定し、呼吸性であればHCO3-の変化、代謝性であればpCO2の変化を確認し、ほぼ合致するものが背景で生じた酸塩基平衡の変化と判断される
・まず、「判断」に示された酸塩基平衡異常の欄の数値を確認する
- 急性呼吸性アシドーシスの場合
HCO3-
pH
- 慢性呼吸性アシドーシスの場合
HCO3-
pH
- 急性呼吸性アルカローシスの場合
HCO3-
pH
- 慢性呼吸性アルカローシスの場合
HCO3-
pH
- 代謝性アシドーシスの場合 (±2)
PaCO2
- 代謝性アルカローシスの場合
PaCO2