【病態】
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鉄は主として十二指腸で吸収され、便、尿、汗などから排泄される。肝細胞では多くがフェリチン結合哲として全体で約1gが肝臓に貯蔵されている
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腸管からの吸収増加、肝細胞での哲取り込み亢進などにより肝臓内に過剰な鉄が蓄積された病態
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鉄はフェリチン蛋白内に封じ込められていれば無毒であるが、酸素を活性酸素に変換する触媒作用を持つため、蓄積が過剰になると、遊離鉄が増加して毒性の強いーOHが大量に生じる
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活性酸素は様々な細胞障害を引き起こし、臨床的には肝硬変、糖尿病、皮膚色素沈着、心不全、甲状腺・副甲状腺・下垂体・性腺機能低下などの臨床徴候が出現する
【病因】
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遺伝性と二次性に大別される
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遺伝性は欧米人において発症頻度が高いが、本邦では稀であり数例の家系が報告されているのみである
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二次性ヘモクロマトーシスは本邦では稀ではない(二次性ヘモクロマトーシスの原因を下図に示す)
【診断】
確定診断)
遺伝性: 原因遺伝子の変異の同定
二次性: 組織学的あるいは画像的に組織内鉄過剰沈着の症例
輸血後ヘモクロマトーシス: 総赤血球輸血量20単位以上、かつ血清フェリチン500ng/ml以上(厚労省科研費補助事業難治性疾患調査研究班)
【治療】
遺伝性: 瀉血療法
肝疾患に伴うヘモクロマトーシス: 瀉血療法と鉄制限食
輸血後ヘモクロマトーシス:鉄キレート療法
デフェラシロクスの用法用量に関連する使用上の注意(添付文書より)
通常、デフェラシロクスとして12mg/kgを1日1回、経口投与する。
なお、患者の状態により適宜増減するが、1日量は18mg/kgを超えないこと。
投与開始後は血清フェリチンを毎月測定すること。用量調節にあたっては、患者の血清フェリチンの推移を3〜6ヵ月間観察し、その他の患者の状態(安全性、輸血量等)及び治療目的(体内鉄蓄積量の維持又は減少)も考慮して3〜6mg/kgの間で段階的に増減を行うこと。なお、本剤投与により血清フェリチンが継続して500ng/mLを下回った患者での使用経験は少ないので、本剤による過剰な鉄除去には注意すること。
本剤投与によって血清クレアチニンの増加があらわれることがあるので、投与開始前に血清クレアチニンを2回測定し、投与開始後は4週毎に測定すること。腎機能障害のある患者や、腎機能を低下させる薬剤を投与中の患者では、腎機能が悪化するおそれがあるので、治療開始又は投与量変更後1ヵ月間は毎週血清クレアチニンを測定すること。本剤投与後、成人患者では、連続2回の来院時において、治療前の平均値の33%を超える本剤に起因した血清クレアチニンの増加が認められた場合には、デフェラシロクスとして6mg/kg減量すること。減量後も更に血清クレアチニンが増加し、かつ施設基準値を超える場合には休薬すること。小児患者では、連続2回の来院時において血清クレアチニンが基準範囲の上限を超えている場合には、デフェラシロクスとして6mg/kg減量すること。減量後も更に血清クレアチニンの増加が認められる場合には休薬すること。
本剤投与によって肝機能検査値異常があらわれることがあるので、投与開始前、投与開始後1ヵ月間は2週毎、投与開始1ヵ月以降は4週毎に血清トランスアミナーゼ、ビリルビン、ALPの測定を行うこと。本剤に起因した血清トランスアミナーゼ等の持続的な上昇が認められた場合には休薬し、適切な処置を行うこと。肝機能検査値異常の原因が本剤によらないと判明し、肝機能検査値が正常化した場合に本剤による治療を再開する際には、本剤を減量して治療を再開すること。
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参考文献)
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宮西浩嗣他「糖尿病を合併する見逃せない難治性代謝性疾患 5.ヘモクロマトーシス」糖尿病 58(8):538~539,2015
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大屋敷一馬「治療薬 鉄キレート薬」日内会誌 99:1267~1271,2010
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輸血後鉄過剰症の診断基準と診療の参照ガイド改訂版作成のためのワーキンググループ「輸血後鉄過剰症診療の参照ガイド」令和2年(2020年)3月 改訂第2版