- 脊髄内に脳脊髄液が貯留した空洞が多髄節にわたって形成され、腔内の圧力などの原因によって空洞の周囲の組織に変性が生じる
- 傷害された部位に相応した感覚傷害やしびれ、疼痛が生じる
- 背景となる病態としては52%がキアリ奇形であり、その他、脊髄損傷、脊髄感染症、腫瘍などと関連して生じる
- 発症機序の詳細は不明 ・本邦の患者数の推定は2500人程度で、有病率1.96人/10万人
疾患
脊髄空洞症
【症状】
◎ 片側上肢の温痛覚障害で発症することが多い
- 灰白質が障害されるので、ここで交叉する外側脊髄視床路が侵される
- 外側脊髄視床路は温痛覚、搔痒感、性感などを司っており、両側性にこれらの感覚が障害される。温痛覚障害の出現した部位に神経原性疼痛を伴う場合も多い(40〜60%)
-
外側脊髄視床路以外の経路は障害を受けないので、触圧核、振動核、二点識別などは保持される
→ そこで、脊髄空洞症のキーワードでもある次の二つの特徴が生じる- 解離性感覚障害 温痛覚は脱失するが、触覚、振動覚や位置覚は保たれる
- 宙づり型温痛覚障害 上下に連続して範囲の限られた髄節が障害されるので、両側対称性で上下に限られた範囲の感覚障害をきたす
- 進行例では前核が両側性に障害され、手内筋萎縮と弛緩性麻痺が生じる
- さらに進行すると側索が障害されて、両下肢の痙性麻痺が生じる
- 空洞形成が延髄に広がると、構音、嚥下障害などが生じる
【検査】
画像)
- 単純X線(頸椎前後屈4方向、脊椎全長2R)
- 単純MRI 髄内にT1 低信号、T2高信号 → 造影MRI
【治療】
-
小児例
成長と共に大後頭孔が拡大して改善することがあるのでまずは経過観察
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成人例
- しびれや軽度の疼痛のみの場合
- 内服加療 神経症状が進行性で脊髄症状が重度の場合は手術を検討
- 大後頭拡大術
- 空洞ーくも膜下シャント術
- 腫瘍は切除
-
薬物療法
- メチコバール
- プレガバリン
- ノイロトロピン
- トラムセット
- タリージェ
- サインバルタ
【鑑別診断】
- 脊髄出血、脊髄梗塞、髄内腫瘍
- 参考文献)
- 坂井健雄 監訳「プロメテウス解剖学コアアトラス第2版」医学書院 2015
- 半田肇 監訳「神経局在診断-その解剖、生理、臨床ー 第3版」文光堂 1989
- 矢部一郎 他「脊髄空洞症」神経治療 34:346–349,2017
- Sudo K, Owada Y, Yabe I et al : Syringomyelia as a cause of body hypertrophy. Lancet 347 : 1593–1595, 1996
- 日本神経治療学会「標準的神経治療 しびれ感 脊髄空洞症」医学書院 2017