紅皮症の鑑別診断

紅皮症

  • 全身皮にびまん性浮腫性潮紅が生じて、粃糠様、落葉状の落層が持続する状態
  • 紅斑は全身の皮膚面積の80〜90%におよぶ
  • 強い搔痒を伴う
  • 掌蹠では皮膚肥厚や亀裂がみられることがある
  • 一般に特異的な病理所見はなく、非特異的な炎症像だが、原疾患によっては特徴的な所見がある
  • 【重症度の評価】

    • 急速に進行し、ショック、発熱、粘膜疹、呼吸苦、喘鳴などがあれば以下の疾患を考えて迅速に対応すべき
    • 上記がすべて当てはまらなければ、即座に第三次医療機関に搬送する必要はないと考える
    アナフィキラシー

    スティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症

    薬剤性過敏症症候群(DIHS)

    急性汎発性発疹性膿疱症(AGEP)

    毒素性ショック症候群(toxic shock syndrome; TSS)

    ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群

      【鑑別診断】

      ・アナフィラキシーはアレルゲン暴露後の急激な発症と皮疹のパターンから鑑別できるが、発熱や下痢があれば毒素性ショック症候群も鑑別に入る ・アレルギーによる紅皮症としては、スティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症、薬剤性過敏症症候群、急性汎発性発疹性膿疱症が鑑別となるが、原則的に皮膚生検が必要 ・毒素性ショック症候群は発熱、急激な経過、 びまん性紅皮症などから、上記のアレルギーによる紅皮症と鑑別は容易だと思われる ・ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群は成人ではまれ

      【評価】

      • 初期評価として以下の検査を行う
      • 必要に応じて、細菌学的検査、皮膚生検などを進める
      • IgE抗体高値であればTARCでアトピー性皮膚炎の重症度を評価してもよい

      【原因疾患】

      • 多岐に渉るが、特に注意すべきは、急性に進行するもの、バイタルの変動を伴うものである


      【湿疹性紅皮症】

      • アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、自家感作性皮膚炎を代表とする各種湿疹が、なんらかの原因により汎発化したもの
      • 全身の皮膚は浮腫性に潮紅し落屑を伴う
      • 強い搔痒があり、無痛性リンパ節腫脹を伴うことが多い
      • ステロイド外用が著効する

      【薬剤性紅皮症】

      • 上記のアナフィラキシー、SJS/TENは重症であり迅速な評価、治療が必要である
      • より軽症の場合でも、原則入院管理が必要である
      • 速やかに被疑薬を中止して、必要と判断すればステロイド剤投与(パルスを含む)を行う
      参考文献)
      1. 清水宏「あたらしい皮膚科学」中山書店 71:456-469,2006
      2. 石川治 田村敦志「皮疹からみる皮膚病理」南江堂 2010
      3. 山崎雄一郎 他「全ての診療科で役立つ皮膚診療のコツ」羊土社 2011
      4. 西山茂夫「皮膚病アトラス」文光堂 2005