- 痛風による関節炎の多くは急性に発症し痛風発作と呼ばれる
- 主として下肢の関節の単関節炎として生じる。第一中足趾関節が代表的であるが、足関節、足背関節にも生じる
- 長期罹患例では膝関節や手指の関節にも生じるが、股関節や肩関節はまれ
- 通常は単関節炎であるが、慢性期では多発性関節炎となることがあり、関節リウマチなどとの鑑別が困難なこともある
疾患
痛風
【診断】
- 発作中の血清尿酸値は必ずしも高値ではない
- 尿酸降下薬の服用3ヶ月以内では痛風発作が起こりやすい
- 罹患関節の関節液から尿酸結晶は診断的価値が高い
- 画像診断では特異的なものはない
(鑑別診断)
- 偽痛風、化膿性関節炎、滑液包炎など
【治療】
前兆期の発作予防)
コルチヒン0.5mg頓用
- 痛風患者にはあらかじめコルチヒンを処方しておくのがよい。症状が増悪してからでは十分な効果が得られないとされている
痛風発作)
-
初回治療 ナプロキセン
ナイキサン(100)3錠 3時間ごとに3回 1日のみ
→ ナイキサン(100)3〜6錠 分2〜分3 -
副腎皮質ステロイド:腎機能障害等でNSAIDSが用いられないとき
PSL15〜30mg/日で開始、徐々に減量して3週間で中止
尿酸降下療法)
- 尿酸降下薬の投与で血清尿酸値が低下すると、痛風発作が生じやすくなる
-
これを予防するために予防的にコルチヒンが用いられる(コルチヒン・カバー)
コルチヒン0.5mg 朝食後
目標尿酸値(ガイドライン)
- 痛風発作がある患者 尿酸≦6.0mg/dL
- 痛風発作既往はないが、尿路結石、腎疾患の合併がある 尿酸≦8.0mg/dLで治療を考慮
- 合併症が何もない場合 尿酸≦9.0mg/dLで治療を考慮
腎障害がある患者の高尿酸血症に対する尿酸降下薬の使用については日本のガイドラインでは推奨されているが、欧米のガイドラインではエビデンスがないと言われている
高血圧や心不全のある患者の高尿酸血症の薬物治療は積極的には推奨されていない
無症候性高尿酸血症の治療の必要性に関しては明確なエビデンスはない
- 参考文献)
- 日本痛風・核酸代謝学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 2019年改訂」
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001086/4/Clinical_Practice_Guidelines_of_Hyperuricemia_and_Gout.pdf- 山中寿「高尿酸血症・痛風の診断と治療」日本内科学会雑誌 104巻 9号
- 川尻真也 他「 高尿酸血症の持続により持続性の多発関節炎を呈した慢性結節性痛風の一例」Jpn. J. Clin. Immunol., 31 (3) 190~194 (2008) 2008 The Japan Society for Clinical Immunology
- 藤森新「痛風・高尿酸血症の病態と治療」日本内科学会雑誌 107巻 3号 2017
- 杉浦美砂 他「多発関節炎を呈した慢性結節性痛風の高齢男性」日老医誌 2015;52:415―420