- 脊髄障害と末梢神経障害(vitamin B12 deficiency poly- neuropathy)の2つがある。
- ビタミンB12や葉酸の欠乏による緩徐進行性の代謝性疾患
- 大球性貧血(悪性貧血)を伴わない場合も多く注意が必要
- 胃切除後から数年で発症することがほとんど
疾患
ビタミンB12・葉酸欠乏
【亜急性連合性脊髄変性症】
- 脊髄症状では、後索と側索が障害されるため,亜急性連合性脊髄変性症(subacute combined degeneration)と呼ばれる
【症状】
- 側索より後索が早く障害されるので、脱力より失調症状(圧覚、位置覚などの障害によるぎこちない歩行など)が先行する
- 側索の障害では一般に痙性、錐体路症状が進行してから末梢神経障害が遅れて出現し、痙性から弛緩性に変化していく
- 初期より深部感覚障害と錐体路症状が出現する
- Romberg徴候陽性(下肢における圧覚、位置覚が失われるため)
- 下肢の痙性麻痺をほぼ左右対称に認める(錐体路症状)
【検査所見】
- 約1/4では貧血を伴わず、神経症状が初発症状となりうる
- 病理変化の主座は脊髄白質で、下部頸椎、上位胸髄から上下に病変が進展し、ついで側索へ拡がる
- ビタミンB12<100pg/mlの場合は欠乏、400pg/ml以上の場合は欠乏なしと判断する
- 100ー400pg/mlの場合は、血清メチルマロン酸、血清・尿中ホモシスティン値を測定する。これらが高値であればたとえ血清ビタミンB12が正常であっても、 細胞内でビタミンB12が欠乏している可能性が高い
- 胃切除や厳格な菜食主義、摂食障害がないのにビタミンB12欠乏がある場合は、可能であれば抗胃壁抗体、抗内因子抗体を測定する(いずれも保険適応無し)。いずれかが陽性であれば自己免疫性胃炎である
◎ 特に高齢者では、大球性貧血がなくても、血清ビタミンB12 値が正常範囲であっても亜急性連合性脊髄変性症を否定しきれない
錐体路障害: 1.痙性麻痺 2.腱反射の亢進 3.病的反射(特にBabinski反射)の出現 4.腹壁反射の消失または減弱
腹壁反射: 腹部の4つの象限を臍付近で綿棒などにより軽くなでることで誘発される。正常であれば、腹部の筋肉が収縮して、臍がなでられた領域の方へ動く。なでることで皮膚が牽引されて動く可能性を排除するため、皮膚を臍に向かってなでることが推奨される
【治療】
VB12 メコバラミン(500μg)IV あるいはIM 週3回 2ヶ月間継続 その後、1-3ヶ月に1回投与
- 参考文献)
- 畑中裕己「ビタミンB12欠乏性神経障害」臨床神経生理学 45巻6号 p.532-540