REM睡眠行動障害(rapid eye movement(REM)sleep behavior disorder; RBD)
    ・夢内容の行動化をおこす睡眠時随伴症群の1つ
    ・有病率は一般人口の約0.5%と報告されている
    ・REM睡眠中に夢を見ても、錐体路が遮断されているため夢内容が行動になって現れることはないが、RBDではこの遮断が破綻してるため行動化する
    ・長期的な経過観察でαシヌクレイノパチーの発症が高率に認められる
    (αシヌクレイノパチー) シヌクレイノパチーは、パーキンソン病、レビー小体型認知症を含む進行性の神経変性疾患の総称。シヌクレイノパチーでは、「αシヌクレイン」と呼ばれるタンパク質が細胞内に凝集することで神経機能の障害を引き起こすとされている

症状

    ・ストーリーのある複雑な異常行動をおこし、その程度は様々である
      寝言や上下肢の軽い動き程度
      叫ぶ、近くにあるものを殴る、蹴る
      起き上がって歩く、走る
    ・暴力的な行動が多いが異常行動は数分以内が多い
    ・睡眠後半に多いが、夜間のどの時間帯にも起こりうる
    ・覚醒直後には通常は夢の内容を覚えており、夢の内容は争いや喧嘩など恐怖と不快感を伴うものが多いが、楽しい夢のこともある

診断

    ・家族やベッドパートナーからの情報が診断に有用
    ・疑えばスクリーニング問診票を用いた評価を行う。5項目以上該当すればRBD疑いとなる

RBDスクリーニング問診票

    次のうち当てはまるものをチェックしてください 1. とてもはっきりした夢をときどき見る
    2. 攻撃的だったり、動きが盛りだくさんだったりする夢をよく見る
    3. 夢を見ているときに、夢の中と同じ動作をすることが多い
    4. 寝ている時にうでや足を動かしていることがある
    5. 寝ている時にうでや足を動かすので、隣で寝ている人にケガを負わせたり、自分がケガをしたりすることもある
      6. 夢を見ているときに以下のできごとが以前にあったり、今もある
    6.1 誰かとしゃべる、大声でどなる、大声でののしる、大声で笑う
    6.2 うでと足を突如動かす/ けんかをしているように
    6.3 寝ている間に、身振りや複雑な動作をする。(例:手を振る、挨拶をする、何かを手で追い払う、ベッドから落ちる)
    6.4 ベッドの周りの物を落とす。(例:電気スタンド、本、メガネ)
    7. 寝ている時に自分の動作で目が覚めることがある
    8. 目が覚めた後、夢の内容をだいたい覚えている
    9. 眠りがよく妨げられる
    10. 以下のいずれかの神経系の病気を、以前患っていた、または現在患ってますか。(例:脳卒中、頭部外傷、パーキンソン病、むずむず脚症候群、ナルコレプシー、うつ病、てんかん、脳の炎症性疾患)

判定 

    ・確定診断には睡眠ポリグラフ検査(PSG)による筋緊張抑制の障害の検出が必須

鑑別診断


治療

    ・異常行動時の事故を防ぐための危機回避手段を検討して行う
    ・アルコールの飲み過ぎを控え、増悪因子となるストレスを避けるよう心掛ける
    ・薬物としてはクロナゼパムの就寝前投与が有効
    ・抑肝散、メラトニン、プラミペキソールも試みられている

自然経過

    ・長期的な経過観察でαシヌクレイノパチーの発症が高率に認められる
    ・特発性RBD患者29例の診断後平均3.7年(RBD発症後12.7年)約38%がPDを発症し、その後、16年間の追跡結果では、追跡可能であった26例中21例(80.8%)がRBD 発症から平均13 年後にPD 関連疾患および認知症に進展したという報告がある(*4*5)
function rbd(){ var arrone = document.par01.q1; var num=0; for (i=0; i<13; i++) if (arrone[i].checked) num++; var rbddx=""; if(num<5){rbddx="積極的にレム睡眠行動障害を疑いません";} else if(num>4){rbddx="レム睡眠行動障害疑いがあります。睡眠障害専門医に紹介を";} document.getElementById("RBD").innerText=rbddx }
    参考文献)
    1. 下畑享良 他「Rapid eye movement (REM) 睡眠行動障害の診断,告知,治療」臨床神経 2017;57:63-70
    2. 鈴木圭輔 他「レム睡眠行動異常症と神経変性疾患」 認知神経科学 Vol. 17 No. 1 2015
    3. 野村哲志「レム睡眠行動異常症の自律神経障害」自律神経,57:63–66, 2020
    4. Schenck CH, Bundlie SR, Mahowald MW. (1996)Delayed emergence of a parkinsonian disorder in 38% of 29 older men initially diagnosed with idiopathic rapid eye movement sleep behaviour disorder. Neurology 46, 388-393. 5. Schenck CH, Boeve BF, Mahowald MW. (2013) Delayed emergence of a parkinsonian disorder or dementia in 81% of older men initially diagnosed with idiopathic rapid eye movement sleep behavior disorder : a 16year update on a previously reported series. Sleep Med 14, 744-748.