睡眠時無呼吸症候群
    ・睡眠関連呼吸障害に含まれる病態で閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)と中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea:CSA)に大別される
    ・OSAは上気道虚脱による無呼吸や低呼吸等の呼吸イベントが睡眠中に繰り返し生じる。睡眠中に呼吸努力が生じて、通常いびきが生じる
    ・CSAではこのような弩弓努力がみられず、中枢神経系での呼吸コントロールが失われて無呼吸が生じる。心不全や脳卒中患者でみられるチェーン・ストークス呼吸はこれに属する
    ・AHI(apnea hypopnea index:後述)≧15かつ日中の過度の眠気をもつ患者の有病率は男性で5%、女性で2-3%程度
    ・SASの大多数をOSAが占める。以下、主としてOSAについて説明する

症状

    ・睡眠中の窒息感、息苦しさ、日中の過度の眠気など
    ・しかし、これらのみでSASを診断することはできない

診断

    ・スクリーニングとしては以下に示すような質問紙が用いられるが診断精度自体は低い
    ・確定診断には終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)が標準として用いられる
    ・在宅で施行でき、簡便である簡易モニターも用いられるが診断精度はPSGに劣る
    ・簡易モニターでAHIが5以上、40未満の場合はPSGが推奨される

ESS日本語版

もし、以下の状況になったら、どのくらいうとうとする(数秒〜数分眠ってしまう)と思いますか
最近の日常生活を思い浮かべてお応えください

以下の状況になったことが実際になくても、その状況になればどうなるかを想像してお応えください(1〜8の各項目で○はひとつだけ)

すべての項目にお応えいただくことが大切です

できる限りすべての項目にお応えください
    1)すわって何かを読んでいるとき(新聞、雑誌、本、書類など)
    うとうとする可能性はほとんどない
    うとうとする可能性は少しはある
    うとうとする可能性は半々くらい
    うとうとする可能性が高い
    2)すわってテレビを見ているとき
    うとうとする可能性はほとんどない
    うとうとする可能性は少しはある
    うとうとする可能性は半々くらい
    うとうとする可能性が高い
    3)会議、映画館、劇場などで静かにすわっているとき
    うとうとする可能性はほとんどない
    うとうとする可能性は少しはある
    うとうとする可能性は半々くらい
    うとうとする可能性が高い
    4)乗客として1時間続けて自動車に乗っているとき
    うとうとする可能性はほとんどない
    うとうとする可能性は少しはある
    うとうとする可能性は半々くらい
    うとうとする可能性が高い
    5)午後に横になって、休息をとっているとき
    うとうとする可能性はほとんどない
    うとうとする可能性は少しはある
    うとうとする可能性は半々くらい
    うとうとする可能性が高い
    6)すわって人と話をしているとき
    うとうとする可能性はほとんどない
    うとうとする可能性は少しはある
    うとうとする可能性は半々くらい
    うとうとする可能性が高い
    7)昼食をとった後(飲酒なし)、静かにすわっているとき
    うとうとする可能性はほとんどない
    うとうとする可能性は少しはある
    うとうとする可能性は半々くらい
    うとうとする可能性が高い
    8)すわって手紙や書類などを書いているとき
    うとうとする可能性はほとんどない
    うとうとする可能性は少しはある
    うとうとする可能性は半々くらい
    うとうとする可能性が高い

合計 
判定 

治療

    ・標準治療はCPAP(continuous positive airway pressure)であり、軽症、あるいはなんらかの理由でCPAPができない場合は口腔内装置(oral appliance:OA)も用いられる
    ・NYHAⅢ以上の慢性心不全やCPAPで十分な治療効果が得られない場合はASV(adaptive servo ventilation)が適用になる場合がある
    ・NYHAⅢ以上の慢性心不全では酸素療法の適応となる場合もある
    ・肥満がなく、明らかに扁桃腫大などの解剖学的異常が原因と考えられる場合は手術も検討される



    CPAP治療効果のエビデンスレベル

    参考文献)
    1. 日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」南江堂
    2. 猿田享男 監修「1252専門家による私の治療 2021-2022年度版: 睡眠時無呼吸症候群 陳和夫」日本医事新報社 2022.
    3. 大嶋康義 他「睡眠時無呼吸症候群診療の現状と課題」日内会誌 109:1049~1051,2020〕
    4. 成井浩司「睡眠時無呼吸症候群〜診断と治療〜」 日本内科学会雑誌 104巻 3号 552-555 2015
    5. 日本循環器学会 日本心不全学会「心不全症例におけるAS 適正使用に関するステートメント第2報」2016年 10月
    https://www.j-circ.or.jp/information/ASV_tekiseiriyou_rep2.pdf
    6. 2) Eulenburg C, Wegscheider K, Woehrle H, et al: Mechanisms underlying increased mortality risk in patients with heart failure and reduced ejection fraction randomly assigned to adaptive servoventilation in the SERVE-HF study: results of a secondary multistate modelling analysis. Lancet Respir Med 2016; 4: 873-81.
    7. Woehrle H, Cowie MR, Eulenburg C, et al: Adaptive servo ventilation for central sleep apnoea in heart failure: SERVE-HF on-treatment analysis. Eur Respir J 2017; 50: pii: 1601692.