疾患
レストレスレッグズ症候群
レストレスレッグズ症候群(Restless legs syndrome:RLS)
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・日本人では2〜5%の有病率、ヨーロッパでは10%前後と高い
・男性より女性のほうが2-3倍多い
・約3割に家族歴がある
分類
・発症年齢と原因による区分がある
・症状としてRLSと関連することが明らかにされている疾患に続発する場合は二次性とされる
・早期発症型と晩期発症型では臨床的な特徴がやや異なる

症状
・最も特徴的な必須の症状は「下肢を動かさずにはいられない衝動(urge to move legs )」と表現される
・下肢や他の身体部位の異常感覚を訴える場合が多い。この感覚の表現は非常に多彩であり「むずむず」と思い込んでいると見逃す
・15%程度では異常感覚を訴えない
・就眠中あるいは安静時の周期性四肢運動(periodic limb movements during sleep:PLMS)がみられる
・81%が不眠に、49%は日常生活に支障が出て、71%は気分障害を伴ったとする報告がある(*2)
診断
Ⅰ. まず必須4診断基準を確認する
・次に、RLSと間違いやすいいわゆるRLS mimicを除外する
① 神経学的評価 原則的に感覚神経機能や深部腱反射は正常であり、これらがあれば末梢神経障害やミオパシーを考える
② ドーパミン作動薬の効果を確認 7割以上が反応して軽快、寛解する。RLS mimicでは無効なことが多い
③ PLMSの確認 RLSの80%に出現することが示されている(*4)。しかしながら60歳以上の高齢者において少なくとも30〜40%に出現し、必ずしもRLSに特異的ではない(*3)

Ⅱ. 特発性RLSでなければ二次性RTSを検討する
・特発性RLSでも二次性の要素が関連する可能性はありえる

・ここでは二次性でない特発性RLSをしっかりと診断して治療することが重要
・二次性RLSでは原疾患の治療が優先されるが、原因として疑われる薬剤があれば可能な限り中止して、鉄補充を試みる
治療
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軽症の場合)
・規則正しい生活、筋腫、禁煙、カフェイン摂取制限、適切な運動習慣などの生活習慣の改善から
・血清フェリチン<50μg/Lのときはまず鉄剤補充
症状が強く日常生活に支障がある場合)
・上記に加えて薬剤を投与する
① ドパミン作動薬
(症状が夕方〜夜間に限られる場合)
ビ・シフロール(0.125mg) 1〜2錠/就寝前1回/日 MAX 0.75mg 就寝あるいは症状出現の1〜3時間前
レキップ 1.5〜2.0mg 就寝あるいは症状出現の1〜3時間前
(日中も症状が出現する場合)
ニュープロパッチ2.25〜4.5mg1回/日
レボドーパ 例:マドパーL 50mgX1回 50mgX2回
・長期投与で副作用が生じやすいため第1選択ではない。診断時に試みたり、間欠型RLAで頓服として用いるのには便利
(Augmentation)
・ドパミン作動薬による長期治療の合併症
・症状の重症度の増悪、出現頻度や時間の延長、上肢にまで症状が拡大など
・早朝の症状増強(特に短時間作用型)
② Augmentationなどの副作用の場合は、ドパミン作動薬の量は最小として以下の併用を検討
ガバペンチン1〜2錠 1回就寝前
参考文献)
1. 日本神経治療学会「標準的神経治療:Restless leg症候群」2012
2. 久米明人 他「日本人特発性レストレスレッグス症候群の臨床的特徴」 臨床神経2010;50:385-392)
3. Ancoli-Israel S, Kripke DF, Klauber MR et al : Periodic limb movements in sleep in community-dwelling elderly. Sleep 14 : 496-500, 1991
4. Montplaisir J, Boucher S, Poirier G et al : Clinical, polysomnographic, and genetic characteristics of restless legs syndrome :
a study of 133 patients diagnosed with new standard criteria. Mov Disord 12 : 61-65, 1997
5. 鈴木圭輔 「レストレスレッグス症候群の神経治療学」神経治療 38:499–502,2021
6. 猿田享男 監修「1252専門家による私の治療 2021-2022年度版」日本医事新報社 2022
7. 大島勇人「不眠症と見誤られやすい睡眠障害」レジデントノート Vol. 24 No. 10 (10月号) 2022 1695-1702
8. 内山真「睡眠障害の対応と治療ガイドライン」じほう 2019