起立性低血圧

起立性低血圧

    ・仰臥位から立位への体位変換で、心臓への循環血流量は約30%減少する。このために心拍出量と血圧が低下するが、健常者では遅滞なく圧受容器反射系が賦活されて血圧は適切に保たれる
    ・この反射が適切に機能しないと起立時に高度の血圧低下を来す
    ・高齢者医療機関受診者の5〜30%にみられるとされている
    ・降圧薬服用者では50〜65%に起立性低血圧がみられたとの報告がある
    ・欧州心臓学会ガイドラインでは、失神全体の15%を占めると報告されている
    ・原因疾患は非常に多岐に渉る


      【診断: 起立時血圧測定】

        ① 事前になるべく長時間(可能なら10分間)臥床安静する
        ② 臥位で血圧と脈拍を測定する
        ③ 立位直後に血圧測定する。このとき下記の診断基準を満たせば終了
        ④ 立位を3分間維持して血圧測定する(5分まで延長してもよい)
        ⑤ 陽性とする基準
         ・収縮期血圧20mmHg以上、あるいは拡張期血圧10mmHg以上の低下を認めた場合
         ・収縮期血圧90mmHg未満となった場合

         ◎ 起立性低血圧を診断したら、必ずその原因疾患の検索を行うべきである。特に、消化管出血などによる循環血流量減少、高血糖に伴う脱水、敗血症によるプレショック等には注意が必要


      【治療】

        1. 病態を詳しく説明する
        2. 脱水、長時間の立位、過食、飲酒、塩分制限などの誘因、また血管拡張薬など原因となり得る薬剤の減量中止
        3. 適切な水分・塩分摂取(高血圧がなければ、水分2〜3L/日および塩分10g/日)
        4. フロリネフ0.02〜0.1mg/日 分2〜3
        5. 腹帯、弾性ストッキング
        6. α刺激薬 塩酸ミドリリン(メトリジン) 4mg/日(最大8mg/日) 分2 塩酸エチレフリン(エホチール)15〜30mg/日 分3

      【予後】

        ・予後は基礎疾患の有無に依存する。特発性を除き自律神経障害例の予後は不良である
        参考文献)
        1. 清田雅智監修 髙岸勝繁著「ホスピタリストのための内科診療フローチャート(第2版)」有限会社シーニュ 2020
        2. 2011年度合同研究班 「ダイジェスト版 失神ガイドライン(2012改訂版)」
        3. 河野律子 他「起立性低血圧」昭和医会誌 第71巻 第 6 号〔 523-529 頁,2011 〕
        4. 荒木信夫「自律神経障害の臨床」日本内科学会雑誌 第100巻 第 9 号・平成23年9月10日 2708-2714