症候

    ”Medisophia”の核心は鑑別診断のサポートです。様々な主訴について、それぞれの疾患ごとに感度や特異度の高い、あるいは特徴的な所見を確認していくことで、該当する可能性のある疾患について、その妥当性を層別化して表示する仕様になっています。

    どのようにアプローチすればリスクの高い疾患を除外しつつ、もっとも効率的かつ確実に正しい診断にたどりつけるかを徹底的に考え抜いてアルゴリズムを作り上げています。

    そのアプローチは単一ではなく、訴えに対して最適化するように工夫した結果、それぞれに特徴のあるフローをたどるようになっています。しかし、基本的には以下の考え方に基づいてアプローチを組み立てています。



    一般的に鑑別すべき疾患が多いものほど的確な診断が難しくなります。”Medisophia”では、鑑別診断の数に基づいて3種類のアプローチを提供します。
    ① 主訴から非常に多くの疾患を鑑別する必要があるもの
    ② 非常に多くの疾患を鑑別する必要があるが、重要なひとつの特徴によって、それらが適切にグループ分けできるもの
    ③ 鑑別すべき疾患の数が少なく、主訴から直接に鑑別診断を行っても問題ないもの

    ①の代表は「不明熱」や「体重減少」です。たとえば不明熱であれば、数週間の経過観察に様々な感染症や悪性疾患などの除外を進めつつ、それでも寛解も診断もできない場合に始めて「不明熱」と考えるべき段階に至るわけです。
     その時点で鑑別すべき疾患は非常に多種多様です。おそらく、相当の専門家でないと、それら総ての臨床的特長を把握して適切に鑑別診断することはできません。
     “Medisophia”では、これらの疾患群について、それぞれ診断の補助となる臨床的特徴を選択していくことで、各鑑別診断について、その可能性を層別化して表示します。
    例を示します。これは、私が最近実際に経験したものです。個人情報は取り除いて臨床的特徴だけをチェックしていきます。


      すると、 積極的に疑う 多発性リウマチ性筋痛症、関節リウマチ、感染性心内膜炎
      可能性中等度 血管炎
      可能性あり 皮膚筋炎/多発性筋炎、成人発症スチル病
      他に該当するものがなければ疑ってみる レジオネラ肺炎


      という結果になります。感染性心内膜炎を除外しつつ膠原病の専門医に紹介し、結局診断は血管炎(顕微鏡的多発血管炎)でした。

      ②は鑑別すべき対象疾患の数は非常に多いものの、ひとつのキーとなる設問によって、それらがいくつかのグループに分類されて鑑別しやすくなるものです。

      その例は「運動麻痺・筋力低下」です。これを「症状の分布」で区分することによりわかりやすいいくつかの疾患群に区分されます。



      たとえば「片麻痺」であれば次のようになります。



      また、「多発単神経炎」であれば診断は腫瘍随伴症候群か血管炎に絞られます。
      ③に該当する訴えについては、はじめから鑑別診断が限られているので、直接鑑別診断にはいることができます。これについては実例は省略させていただきます。
      このように”Medisophia”は、様々な主訴について最も合理的なアプローチをガイドすることによって、間違いなく確実に、短時間で正しい診断にたどりつくことを強力にサポートするプログラムなのです。
      臨床の中で、アプローチが不適切だと判断すれば、随時修正しています。