ADDスコア(大動脈解離の可能性推定)


★ 非専門医であれば心電図でのST上昇、あるいは心筋Tn上昇を確認すれば専門医紹介

    狭心症、心筋梗塞の診断で第1段階は心電図だが、非ST上昇型冠症候群(NSTE-ACS)という概念の確立に伴い診断ツールとしては不完全なものとなった。心電図を繰り返し確認することも重要だが、現在のガイドライン(*1)の推奨は、バイオマーカーである心筋Tnの測定である。心電図のみでなく、これを繰り返し測定することで診断の確実性上昇がはかられている

【STEP1:心電図でのST上昇】

    あり なし

方針  

【STEP2:心筋トロポニン】

    上昇あり 上昇なし

方針  

  • 高感度cTn測定を用いる場合と、TnT定性を用いる場合では推奨される測定間隔が異なる(*2)
  • 心筋Tn定性も迅速性に優れ、心筋梗塞の診断に有用だが、心不全、心筋炎など心筋梗塞以外の心疾患や、あるいは慢性腎不全があると擬陽性が多くなる
  • 従って、可能な限り高感度cTn測定を用いるべき

【STEP3:HEART score 】

    ◎心電図でST上昇が見られない場合は、患者のリスク因子と心筋Tnを合わせて評価し方針を決定する。心筋Tn陰性でも経過観察や再灌流療法を検討する場合もあれば、陽性でも帰宅可とする場合もありえる
(現病歴)
    非常に疑わしい 疑いは中等度 やや怪しい
(心電図)
    有意なST偏位 非特異的なST-T変化、LBBB、人口ペースメーカー留置 正常
(年齢)
    65歳以上 45〜64歳 44歳以下
(危険因子)
    3つ以上の危険因子、あるいは動脈硬化性疾患既往 1〜2つの危険因子 危険因子がない

    (動脈硬化の危険因子)高コレステロール血症、喫煙、高血圧、糖尿病、動脈硬化性疾患の家屋歴、BMI≧30
(トロポニンT)
    正常上限3倍以上 正常上限値以上、その3倍未満 正常範囲内

HEART score  

6週間以内のMACE発生率  

方針  

    MACE:Major Adverse Cardiac Event=心筋梗塞、PCI/CABG、全ての原因による死亡
    *3の論文のサブグループ解析では高感度cTnを用いるmodified low-risk HEART scoreでは3点以下の場合は、6週間以内のMACE発生率は0.8%だと報告されている
    参考文献)
  1. 「急性冠症候群ガイドライン(2018改訂版)」2006
  2. 久住 裕俊 他:「急性冠症候群の診断における高感度心筋トロポニン測 定の臨床的意義―ROC 解析による AUC 値の比較―」 医学検査 Vol.65 No.6 2016
  3. HEART Score Risk Stratification of Low-Risk Chest Pain Patients in the Emergency Department: A Systematic Review and Meta-Analysis.Ann Emerg Med. 2019 Feb 1.